アトピー性皮膚炎患者さんのQOL

アトピーはかゆいだけ、と誤解されることがありますが、これまでの臨床研究でご本人のQOL (Quality of Life 人生・生活の質)に大きな影響をもたらすことがわかっています。

さまざまな皮膚疾患者のQOLを調査した研究では、乾癬、尋常性白斑、にきび(尋常性ざ瘡)に比べ、アトピー性皮膚炎患者のQOLが最も低下していることが報告されています 。

QOLを測るものとして臨床場面や研究で使われている尺度では、その患者さん本人のQOLを身体面、社会面、精神面などトータルで教えていただいています。

今から25年ほど前に当時の厚生省長期慢性疾患総合研究事業では、鳥居新平先生がたの調査によって

アトピーの重症度が増すほどに患者さんのQOLが下がることや、睡眠やかゆみから派生する影響、アトピーによって仕事や学業などにも支障がでることが報告されました。

本研究の研究者らが20年ほど前に行ったQOL調査研究では、アトピーをもつ患者さんは、そうでない群と比べて身体面、心理面、社会面、環境面の全領域においてQOLが低下している傾向や、職業面への影響やストレスが生じていることが報告されました。

皮膚疾患をもつお子さんのQOLを研究した英国の小児皮膚科医は、アトピーの小児患者さんのQOLが最も低かったことを1995年に報告しました。

本研究では18歳以上の方を対象にしていますが、効果が検証されたらお子さんやご家族にも役に立てていけるよう願っています。

2000年には日本皮膚科学会から、最適と思われる治療法についてアトピー性皮膚炎の治療ガイドラインが作成され、その後も改訂が重ねられています。

さまざまな新薬がその後開発されています。治療ガイドラインでは、そういった薬物による標準治療に加えて、

1)つらい症状に伴う2次的な苦痛(睡眠や対人関係、気持ちの落ち込み、学業・仕事への影響等)、

2)ストレスによる悪化(かゆみが増したり、かくことが習慣になる等)、

3)症状コントロールの難しさによる無力感等に対し

心身両面への支援が大切だとふれられています。